こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 2019年1月3日

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大泉洋さん演じる主人公・鹿野靖明さんが、美瑛町の日の出の方角に向かって、電動車いすでゆっくり進みながら独りごちるシーンがあります。

「なんだか走ってるみたいだなぁ」

「いやいや、あんたは走ってるよ」ぼくは映画をみながらつぶやきました。声には出さなかったけれど。

筋ジストロフィーと介護について、医療考証や取材に基づいた現実の一端が描かれていますが、スクリーンに映っていたのは、普通の生活を願う普通の中年おやじの姿でした。

鹿野さんの足は電動車いすです。補助する道具か、生身の二本の足か。そこに大した違いはなくて、区別する必要はないんじゃないかなあ。なんて言ったら、「それはキレイごとが過ぎる」とあなたは鼻白むでしょうか。でも、旅行先の美瑛のコテージで鹿野さんは、たしかな足取りで駆け出したようにぼくには見えました。

 

まりちゃんと「こんな夜更けにバナナかよ」をみました。まりちゃんは、まわりの人に助けを頼むことについてなどなど、思うところがあったとのこと。またそのうち詳しく感想をききたいです。

まりちゃんは車いすにのっています。ぼくは少しの気遣いと少しのお手伝いはするけれど、「そりゃあ友達じゃけえ普通じゃろう」てなもんで、友達がたまたま車いすユーザーだっただけと思っています。しかし、車いすにのってるまりちゃんのとなりに座っていたからこそ、高畑充希さん演じる安堂美咲さんが言い放った言葉には、正直ハラハラさせられました。

「鹿野さんは何様? 障がい者ってそんなに偉いの?」

ボランティア(鹿ボラ)に対して、鹿野さんは暴君の振舞いなので、ごもっともな一喝です。ただ、率直な言葉ゆえに、障がい者と健常者を線引きする険のあるニュアンスが、まりちゃんの気持ちをザワつかせていないだろうか。となりでハラハラというかビクビクものだったというか。

そこからつづくシーンは、美咲さんへ鹿野さんからのラブレターに、ジンギスカンデート。鹿野さんがお腹を壊し、トイレに向かって右往左往。これにはまりちゃんと二人して大笑いしました。

もちろんそれは、不自由ゆえの四苦八苦を嘲笑したわけではありません。「ジンギスカンはある程度レアが一番」と得意顔からの落差。そして、障がい者とか健常者とか関係なく、人間生きていれば誰もが経験する火急の事態のことです。肛門を突き破る勢いの茶色いマグマを知るからこその大笑いです。

「いいのよ。だれだってうんちくらい漏らすもの。わたしだって」。美咲さんは慰めるでもなく言ってのけました。

ハラハラさせられたり、大笑いさせられたり、暴君とうんち、美咲さんの一喝とおもらし告白は、コインの表と裏というか、セットみたいなものでしょうか。

筋ジストロフィーとか車いすとか、障がい者とか健常者とか、そんなのはどうでもよくって、くち幅ったいですが、「さぁ、人生どういう覚悟で生きていきましょうか」これです。普遍のテーマでストーリーを追いました。

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段原ショピングセンター北入口から進むと右手にエレベーターが2基あります。イオンシネマ広島は6階です。2019年1月3日

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